’70年代泣きのギター・インストゥルメンタル・ナンバーの名曲を3曲挙げろと言われたら、サンタナの「哀愁のヨーロッパ」、ジェフ・ベックの「哀しみの恋人達」、そしてロイ・ブキャナンの「メシアが再び」を選ぶ人が多いかも。 70年代初頭、クラブで演奏していたロイのプレイは噂が噂を呼び、エリック・クラプトン、ダニー・コーチマー、ロビー・ロバートソンなどの一流ミュージシャン達がクラブを訪れるようになる。そして’69年何と脱退したブライアン・ジョーンズの代わりにローリング・ストーンズ加入へのオファーが寄せられるが、いかにも彼らしくこの申し出を断ってしまう、そんな逸話のあるギタリスト。’71年、そんな彼にスポットを当てた『世界で最高の無名なギタリスト』という90分のドキュメンタリー・プログラムが全米で放映される。フィルモアでおなじみのビル・グラハムの紹介でフェンダーのテレキャスターを黙々と弾く彼の姿は業界での話題となり、レコード会社間で争奪戦の末、ポリドールと契約。’72年Roy Buchananをリリースする。 「メシアが再び」はその中に収録された、泣き泣きのナンバー。“泣きのギター”という言葉は、この曲から生まれたのでは無いかと個人的に思っています。ジェフ・ベックがこの人から影響を受けたのがはっきりとわかります。この時代にこれだけのピッキングハーモニクスをキュンキュン慣らす人もいなかったと思われます。 最初に触れたジェフ・ベックの「哀しみの恋人達」ですが、この曲が収録されたブロウ・バイ・ブロウのジャケットのクレジットにdedicated to Roy Buchananの文字が記されています。ロイの技法を取り入れてプレイしたジェフ・ベックの敬意の表現ですが、そのプレイスタイルがその後に与えた影響と言うものは計り知れません。 エレキギターを弾く人は、この表現力を感じてみて下さい。